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黒澤明 『夢』 #28

黒澤明 監督が、自分の見た夢をもとに撮り上げたオムニバス映画(短編8話)。

これはどうみても巨匠の道楽作品ですね(苦笑)。他の監督じゃこんな映画作らせてもらえないでしょう。
スピルバーグが製作総指揮でジョージ・ルーカスも協力、ということで思い存分、好きなように創らせてもらったって感じ。でもねえ、やっぱ少しは観る側のことも考えてくれないと...最初映画館で観た時、途中寝ちゃいましたよ(汗;)。

これは担ぎ上げられた巨匠の映画であって、私たちが知ってる純然たる黒澤監督の作品とは少し違う気がします。海外資本が入って、ちょっと色気が出ましたか?。合成とか特撮を使った、テクニックが一人歩きしてるような違和感のあるシーンもあります。

まあしかし80歳にして、このエネルギーは凄い!です。何本かの短編では、格調高き映像美・様式美を魅せてくれました。環境や核問題に警鐘を鳴らす黒澤イズムも健在です。

映画は総合芸術。様々な批判・好き嫌いは当然あるにしても、芸術家・黒澤明として、残すべき作品だったのでしょう。

個人的には第1話、第2話、第5話、第8話 の美しい映像での「夢」が良かったです。特に最終話の笠 智衆さんの独特の味わいと、美しい日本の古き良き風景、これだけでも充分観る価値がありました。

夢

  1990(平成2)年 120分
  【製作総指揮】スティーブン・スピルバーグ
  【脚本】黒澤 明 【撮影】斎藤孝雄、上田正治 【音楽】池辺晋一郎
  【出演】寺尾聰、いかりや長介、マーティン・スコセッシ、笠 智衆 他

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黒澤明 『八月の狂詩曲』 #29

80歳晩期の黒澤明 監督が、円熟した表現手法で描きあげたメッセージ映画

長崎に住むおばあちゃんと孫たちとのひと夏の交流を通して、原爆の恐怖、反戦・反核を訴える。あくまで長閑(のどか)な日常の描写の中から、静かに戦争を諷刺(ふうし※)しています。

※諷刺・・・社会制度に見られる構造的な欠陥や、高官の言動にうかがわれる人間性のいやしさなどを、露骨に非難せず、やんわりと大所高所から批評すること。

そう、まさしく諷刺です。戦争の悲惨な描写や被害者の慟哭などはなく、原爆(ピカ)を目玉で象徴し、いびつに歪んだジャングル・ジムでその被害を目に焼き付ける。実に鮮やかな表現でもって...

そして物議を醸した、リチャード・ギア(ハワイの甥役)と、(原爆で夫を失った)おばあちゃんとの会話。

「オジさんのこと知らなくて、ホントにす・み・ま・せ・んでした」 (片言の日本語で)
「よかと...」
(中略)
「わたしたち、ワルかった」 (※この際 R・ギアの演技についての論議はどうでもいいんです^^;)
「・・・よかとですよ」

このシーンがアメリカのマスコミや国内でもかなりバッシングされたようですが、そんなことは百も承知で黒澤監督は言わせている(訴えたかった)んだと思います。これらのメッセージを日本の戦争の是非云々といった解釈でとらえてしまうのは、誠に残念!(鑑賞力が貧しい)としかいいようがない。

おばちゃんの「よかと...」、このひと言が、いかに寛容で、人間愛に満ちた言葉であるか!。

また同じ原爆で夫を失った老婆どおしが無言で語り合うシーン!。どんな叫びよりも、悲しみの深さを物語っていると思います。

あとは、黒澤映画の中でもおそらく屈指の名ラストシーンであります。いっけん滑稽な絵でありながら、この映画に込めた全ての思いを凝縮させたようなシーン。心に染み入ります。『八月の狂詩曲(ラプソディ)』・・・見事なタイトルと共に、晩年最良の佳作を、日本人のために残してくれました。

八月の狂詩曲
 八月の狂詩曲 1991(平成3)年 100分
  【脚本】黒澤 明 【撮影】斎藤孝雄、上田正治 【音楽】池辺晋一郎
  【出演】村瀬幸子、吉岡秀隆、リチャード・ギア、井川比佐志 他

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黒澤明 『まあだだよ』 #30

黒澤明 監督の作品は、多くの大傑作と共に、個人的に不可解な作品もいくつかあります。
例えば『虎の尾を踏む男達』とか『どん底』とか『白痴』とか...。それらは古典芸能や文学的表現を理解し得ない、私自身の見識不足によるものでありました。

しかし、この最後の作品に関しては、そうしたものとはちょっと違う不可解さでありまして...

これだけの豪華俳優を集めて、大根役者のように大げさに不自然に演じさせた意味?。
※香川京子さんは、ひじょうに慎ましく自然で良かった。

主人公の主人公の内田 百聞(ひゃっけん)がなぜこれだけ教え子に慕われるようになったのか?
その辺のプロセスの描き込みがないので、全く共感できない。

黒澤監督自身は客観的にこの作品をどうとらえたのだろう?。
この作品で描いてる大人のお祭り的ユーモア(?)が、観客に受ける(共鳴する)と思ったのだろうか。

...等々、つっこみどころ満載の作品なんですね。

時に「お〜っ」と感嘆させられる映像美も魅せてくれるし、黒澤監督らしいヒューマニズムも盛り込まれてはいます。しかし、映画界の巨星たる監督が最後に到達した表現作品であるとは、残念ながら思えません。

もしかしたら、内田百聞を自身の姿として投影させた、自虐的表現なのか?と言う感想すら抱いてしまうのです。

まだ次の映画化に意欲的で準備を進めていた、というその途上で黒澤監督は逝去されました。佳作ばかり創って満足するような監督ではなかった!?。何より作品を通して、生き様を示そうとした黒澤監督。

最後に残したのは、巨匠として成熟したものではなく、純粋な自身へ回帰しながら描いた書生的な作品となりました。黒澤監督らしい遺作といえるかもしれません。

まあだだよ

 まあだだよ 1993(平成5年) 134分
  【脚本】黒澤 明 【撮影】斎藤孝雄、上田正治 【音楽】池辺晋一郎
  【出演】松村達雄、香川京子、井川比佐志、所ジョージ、油井昌由樹 他


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